投稿日:2008-04-12 Sat

上巻は少しずつ。下巻は一息に読めた。
廃棄物や科学汚染にまみれた近未来。「大東京学園」の卒業総代になれば、一族将来の安全が保証される。アキラとシゲルはそれぞれの思いを胸に、ついに大東京学園の生徒となったが、学園の有様は評判と異なる物だった。やがて学園の在り方に疑問を抱いたアキラは、脱走することを決意する。
粗筋はこんな感じ。20世紀のサブカルチャー(映画、ブーム、流行用語など)を随所に取り上げているのが特徴で、量はかなり多い。知っているものを見てニヤリとできるかは、その人次第か。(巻末に解説あり。わからない時はそちらを見れば宜しい)
最初の説明が長いけれど、世界観を説明するには適当だと思う。三章、四章の辺りから話のテンポが速くなるので、読んでて飽きない。内容はどうあれ、恩田陸は、畳みかける書き方が本当に上手いと思う。(『麦の海に沈む果実』『ライオンハート』etc)
但し、人物・設定の部分が物凄い勢いで消費されていくので、追いつくのが大変。また今回は、一つの設定(主に人物)をじっくり練り上げていく事も少なかった。読み終えて、情報過多で飽和状態にはなったものの、しっかりと残る物はなかった気がする。
もっとも、作品の在り方を考えれば、あるものの変化を書くよりは、「大東京学園」という一個の都市(且つ、そこに順応した人々)を自由に想像できるくらいの方が面白いかと。漫画チックな内容も楽しめた。
以下は、ネタバレに関する感想。
・タイトル→無限ループということで、なるほどと思った。筆者はタイトルの意味を考えていないとあとがきで書いていたが、十分な意味は付けられていると思う。するとこれは並行世界の話となるのだろうか。実は脳は別の所にあって、彼らは延々と夢を見てるだけだとか。それなんてマトリックス?
・怒濤の如く状況が入れ替わるせいで、各人物の彫り込みが十分でない印象を受けた。特に最後に出てきたオチャノミズの言動や、キョウコの恐怖は、ただのヒステリーにしか見えない(作者等、男女間の意識で差があるのかもしれないが、不確定なので保留)。とにかく普通でない学園だから、頭の逝った人間がいても不思議ではない、と思えばわからないでもないが。
・上に関連して、人物造形について。人間味のあった人物はアタミ・シマバラ・アキラ・シゲルくらいだったと思う。登場人物が多いから仕方ない。キョウコや新宿の脱走グループの面々も、郷里の話や過去話をしただけで終わってしまったから、印象に残らなかったのだろう。
以前に誰かが口にした事だが、過去話をちょろっと書けば、人物の造形は済んでしまうのだろうか。もっと根本にある思想とか理念とかを書き表せれば(或いは匂わせられれば)、人物としての筋が一本通るのではないだろうか? それが一番難しい事だとは思うが、キャラクタを差別化するには重要な点だと思う。そう言う意味で、一番出来上がっていたのはアタミのように思う。後半、殆ど出番が無かったのが残念。
・オリンピックでの妖怪大戦争を見た時は、深夜なのに声を上げて笑ってしまった。何か悔しい。
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